イッセイミヤケ太田伸之社長に聞く
イッセイミヤケの本社で太田社長に最近のファッションについてお話を伺いました。太田社長からは「大きな不況の後にはファッションのリソースが変わる」と興味深い指摘が聞かれました。
大きな不況の後は新しいリソースを求めて走り出す
最近NYに行ったが想像以上にマーケットの状況は悪い。超高級ブランドの靴も期末セールに出て山積みとなるのが普通になった。また、ベーシックな商品もセールとなっており、売れていないことがよく分かる。
小売店はローコスト経営にシフトしており、店頭接客も満足に行っていないが、派遣社員のいるところはやっている。これはかつての日本型ビジネスモデルだが、当時はよく言われていなかった。米国はかつての日本のやり方に一部、近づいているようだ。百貨店は単なるブランドの集合体となり顧客を無視した売りの理論となっているが、これは同質化の方向となる。
こういった不況のあとには同質化からの脱却を考え、新しいリソースを求めて走り出す。80年代の不況の時はセブンスアベニューにも倒産の波は寄せていた。新しいものを売らなければならないのに、怖くて新しいものを入れなかった。このとき、バーニーズニューヨークを手伝ったが、TOKYOブティックを作り、カンサイヤマモトとイッセイミヤケをいれた。また、メディア向けに小さなファッションショーを三越でやった。メンズビギやニコルなども入れたが反響はすごかった。2シーズン目には東京にバイヤーが2,3人来た。3シーズン目には多くのバイヤーが訪れるようになった。
現在の不況の中で、東京、サンパウロ、ソウルなどが"夜明け前"といえ、TOKYOが大きなリソースとなる可能性は高い。
カジュアル化は進む
ファストファッションが元気だが、市場の商品全体の傾向として軽さ、日常性、若さがある。たとえば、従来は大きな高級バッグとスーツがひとつのモデルであったが、最近は小型バッグや袋物になった。それも装飾性や遊び心のあるもの。服も同様に軽くてかわいいものになって来ている。世界のファッション傾向はカジュアル化だが、歴史的にはフランス革命からと言ってもいい。米国のIT企業の幹部はTシャツにジーンズと言わないまでもネクタイはしなくなった。
キャリア向けのシャープなラインが売り場から減っている。また、難しい哲学の背景も要求されず、日常性と等身大のファッションとしてカジュアル化して来ている。カッチリしたものからチャーミングへ。ただし安いものを作ればいいのではなく、クォリティーのあるものが必要なことに変わりは無い。ファストファッションを買っている人も価値を認めれば10倍の値段の服でも買っている。客単価が落ちているわけではない。
最近のジバンシーは見直した。切りっ放しのデザインがあったが、計算された遊び心と軽さが感じられる。チャーミングなラインを出すには高度な技が必要だと思う。
従来無理して高級ブランドを買っていた人が減少しているが、これもいわば健全な売り場となっているともいえる。
日本の伝統美とストリートファッション
19世紀から20世紀のパリのオートクチュールは日本のデザインが多く取り入れられた。西洋に無い新しい美意識を日本のデザイナーは作り出すことが出来る。ミヤケもヨージも洋服を作ってパリコレに出したのだが、バター味にはならず醤油味でキモノの味があったところが新鮮に受け入れられた。同じ黒でも西欧の黒は明るい黒、日本の黒はいわば"影の黒"と言えるもので、そこに新しさを感じている。ケンゾーは京都で100年前の生地サンプルを見て日本の粋に圧倒されたと言っているが、日本の色と色の組み合わせやジャカードの織物などクリエーションのベースは多い。日本のファッションにはクォリティーの高い素材がある、縫製はきめの細かい品質であり、デリバリーも良い。
日本のストリートカジュアルは世界への情報発信源となっている。東京の街は若い人がお金を持っていてファッションに多くを使っている。また、学校や企業ではユニフォームを着ているため、この反動がファッションへのエネルギーになっている。この影響は世界的となっており、パリでもコスプレがはやっている。日本の文化(サブカルチャー)は米国の西海岸に行き、ここからまた逆輸入され、日本ではやったりしている。
仕事好きでセンスの良いバイヤーが減った
かつてアメリカのバイヤーはファッションが好きで仕事をやっていた。今はまじめだがセンスの悪い人が増え、レベルは下がったと感じている。また、日本のバイヤーは頭で走っているようだ。バイヤーは本来ファッションの専門職であるべきだが、日本の大手企業のバイヤーは総合職であり、目利きやセンスのある人は少ない。まして計算は得意でも女心の分からない人では自らが判断して発注することは無い。日本の新進デザイナーであるソマルタの作品も日本人のバイヤーから発注が来るのはやはり海外バイヤーのあととなっている。目利きが出来、新しいものに賭けるバイヤーは減ったが、心あるバイヤーは東京の空気を吸いに来ている。日本からもっと情報を発信し世界に出て行くべきだろう。
日本のデザイナーに
日本の専門学校のクリエーション至上主義ともいえるものはよくないと思っている。
パターンや原型、縫製の基礎が分かり、正当にモノを作ることが出来て初めてデザイナーであり、自分のデザインが具体的にどのような服になるのか分からないようではデザイナーとはいえない。若手のデザイナーは服のスケッチを描く力はあるが、服作りの修行をもっとやるべきだろう。生地を知らないために資材のセレクションが悪く、アンバランスなものも良く見受ける。
更にこれからのデザイナーは世界で仕事をするために英語で議論が出来、意思を伝えることが必要となる。
ブランドを意識しなくなった
最近の傾向としてブランドを意識することが減ったようだ。お店でどんなものが売れているのかと聞くと、アイテムやデザインの説明が返ってくるが、ブランドは二の次となっている。ブランドを意識しない購入、販売になりつつある。顧客が商品そのものを見てクォリティーと価格に満足すれば買っている。こういった現場の動きも含め、この不況の時代の後には必ずや新しい芽が出てくる。
大きな不況の後のリバウンドは大きい。マンネリを打破して新しいリソースを発信提供するために若手のデザイナーには大きなチャンスとなるはずである。
企業名 株式会社 イッセイ ミヤケ ISSEY MIYAKE INC.
代表者 代表取締役社長 太田伸之
所在地 〒151-8554 東京都渋谷区富ヶ谷1-12-10
電話 03-5454-1710
FAX 03-5454-1711
URL http://www.isseymiyake.co.jp/
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